Summaryこの記事の要点
飲食店の営業には保健所の「飲食店営業許可」と「食品衛生責任者」が必須。申請は工事完成の10日ほど前が目安(東京都)。
収容30人以上なら「防火管理者」、深夜0時以降に酒類を主に提供するなら警察署への届出が加わる。
開業費用は公庫調査で平均975万円・中央値600万円(2025年度)。資金調達の相談が苦労の1位。
物件契約の前に、事業計画と売上シミュレーションで「その家賃で成り立つか」を確かめる。順番が逆だと取り返しがつかない。
01飲食店開業の全体の流れと、所要期間の目安
相談から開業までの道筋は、おおむね「コンセプトと事業計画 → 資金調達 → 物件 → 工事・許可申請 → 採用と告知 → 開業」の順です。期間は物件の状況で大きく変わりますが、居抜きで3〜4か月、スケルトンからの内装工事を含むと半年前後かかるのが一般的な見立てです(当社の経験則で、統計ではありません)。
この順番で一番大事なのは、物件を「計画の後」に置くことです。先に気に入った物件を押さえてしまうと、家賃に合わせて計画を歪めることになります。事業計画書と売上シミュレーションの作り方で先に数字をつくり、その数字に収まる物件を探す。この順番を守るだけで、開業後の資金繰りはかなり楽になります。
| 時期 | やること | 関係先 |
|---|---|---|
| 6〜8か月前 | コンセプト、事業計画書、売上シミュレーション、自己資金の確認 | (相談先)出店コンサル、商工会議所、税理士 |
| 5〜6か月前 | 創業融資の申込み。計画書と見積もりが必要 | 日本政策金融公庫、自治体の制度融資(信用保証協会) |
| 4〜5か月前 | 物件の立地診断と比較、申込み・契約 | 不動産会社、物件オーナー |
| 2〜4か月前 | 内装設計・工事。保健所に図面段階で事前相談 | 設計・施工会社、保健所 |
| 1か月前 | 営業許可申請(工事完成の10日ほど前)、防火関係の届出、求人開始、HP・SNS公開 | 保健所、消防署、求人媒体 |
| 開業前後 | 開業届(税務署)、深夜酒類提供の届出(該当時)、プレオープン | 税務署、警察署 |
※ 時期は目安です。居抜きかスケルトンか、融資の有無で前後します。
02必要な許可・資格・届出:保健所、消防、警察、税務署
飲食店を営業するために法律上必要なものは、思っているより少ない代わりに、抜けると営業自体ができません。東京都保健医療局「食品衛生の窓」によると、飲食店営業の許可申請は施設工事の完成予定日の10日くらい前に保健所へ提出し、申請書のほかに施設の構造・設備を示す図面(2通)と、食品衛生責任者の資格を証明する書類が必要です。許可は申請から交付まで2〜3週間を見ておくのが無難で(freee、2026年4月更新)、有効期間は自治体や業種で異なりますが一般に5〜8年です。
| 項目 | 必要になる条件 | 窓口・時期 |
|---|---|---|
| 飲食店営業許可 | すべての飲食店 | 保健所。工事完成の10日ほど前に申請、施設検査のうえ交付 |
| 食品衛生責任者 | 施設ごとに1名。講習会(1日)で取得できる。調理師・栄養士などは講習免除 | 各都道府県の食品衛生協会の講習会 |
| 防火管理者 | 収容人員30人以上の店舗。延べ面積300㎡以上は甲種、未満は乙種 | 消防署へ選任届。講習で取得 |
| 防火対象物使用開始届 | 店舗として建物の使用を始めるとき(内装工事の計画届が別途必要な地域も) | 消防署。使用開始の7日前まで(自治体の火災予防条例による) |
| 深夜酒類提供飲食店営業開始届出 | 深夜0時〜6時に、酒類の提供を主とする営業(バー・居酒屋など) | 警察署。営業開始の10日前まで |
| 開業届 | 個人事業として開業するとき | 税務署。開業から1か月以内。青色申告承認申請も同時に |
見落としやすいのが防火管理者です。「うちは小さい店だから」と思っていても、客席とスタッフを合わせた収容人員が30人を超えると選任義務があります。消防署の判定は面積ではなく人数ですので、席数を決める段階で確認しておくと後が楽です。
Check
保健所の施設基準は自治体ごとに細部が違います(シンクの数、手洗い設備の位置、客席と調理場の区画など)。図面が固まる前に保健所へ事前相談に行くと、工事のやり直しを防げます。これは費用面で一番効く予防策です。
03開業資金の目安:公庫調査の数字と、見落としがちな費用
日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月公表)では、開業費用の平均は975万円、中央値は600万円。500万円未満で開業した人が41.8%います。資金の内訳は平均で自己資金279万円、金融機関等からの借入827万円。開業時に苦労したことの1位は「資金繰り、資金調達」(56.9%)、2位は「顧客・販路の開拓」(49.9%)でした。この調査は公庫の融資を受けた企業が対象なので、借入をしない開業者は含まれていません。
飲食店に限った費用は調査にありませんが、内訳の大きさは「物件取得費(保証金・礼金・仲介手数料・前家賃)」「内装・厨房設備」「運転資金」の3つでほぼ決まります。このうち運転資金を薄くしてしまう計画が多く、開業後に月商が計画の7割で推移した場合に何か月もつかを先に計算しておくことを勧めます。
| 費目 | 中身 | 注意点 |
|---|---|---|
| 物件取得費 | 保証金(家賃の6〜10か月分が多い)、礼金、仲介手数料、前家賃、造作譲渡料(居抜き) | 保証金は退去時の原状回復費と相殺されることが多く、全額は戻らない前提で |
| 内装・設備 | 内装工事、厨房機器、什器、看板、空調・給排気 | 見積もりは2社以上。給排気と電気容量の増設は後から効く費用 |
| 開業準備費 | 許可申請の手数料、HP・メニュー・ロゴ、求人広告、研修期間の人件費、初回仕入れ | 当社のプランではHP・SNSの初期制作費は請求しない(プラン料金に含む) |
| 運転資金 | 家賃・人件費・仕入れ・水道光熱費の3〜6か月分 | 開業直後は仕入れの支払いが売上の入金より先に来る |
※ 保証金の月数や見積もりの相場は、物件と地域で大きく異なります。上の表は項目の整理であって、金額の目安ではありません。
04物件の決め方:家賃比率と立地診断
飲食店の物件選びで最初に見るのは、内装でも駅からの距離でもなく「想定売上に対する家賃の比率」です。業界では家賃を月商の10%以内に収めるのが目安と言われます(統計ではなく経験則です)。月商の見立てがないまま物件を見始めると、この比率が計算できません。
月商の見立ては、席数 × 回転数 × 客単価 × 営業日数で出します。ここで回転数を楽観的に置くと全部が狂うので、ランチ1.5回転・ディナー1回転のように、同業態の実測に近い控えめな数字から始めてください。立地の見方は 店舗の立地診断ガイド に、商圏人口の調べ方(総務省統計局の無料ツール)とあわせてまとめています。
居抜き物件は初期費用を下げられる一方、前の店が撤退した理由がそのまま残っていることがあります。排気の弱さ、客席の見えにくさ、周辺の人の流れの時間帯。前テナントの業態と撤退理由は必ず聞いてください。
05相談先の選び方:誰に、何を頼むか
飲食店の開業相談ができる先は、商工会議所や自治体の創業支援窓口(無料)、日本政策金融公庫の創業相談(無料)、税理士・行政書士(手続き代行)、内装会社やPOS・通信の提供会社(自社サービスの範囲で無料相談)、そして出店コンサルティング会社です。どれが正解というより、頼みたい範囲で選ぶものです。
無料の窓口は制度や手続きの確認に向きます。一方で「この物件でこの業態、この家賃でやっていけるか」のような、判断を伴う相談は、店を出した経験のある人に聞かないと具体的な答えが返ってきません。当社の出店コンサルティング YUMEMIRU は、計画から開業後の経営まで、店舗を出し運営してきた支援者が直接担当します。
Plan 01
梅1回のみ
事業計画・コンセプト・売上シミュレーションの相談を1回。まず全体を整理したい方に。
Plan 02
竹6ヶ月
計画づくりから物件の立地診断、融資申込みの準備まで。開業前の判断を一緒に進めます。
Plan 03
松12ヶ月
開業準備に加えて、HP制作・運用、採用準備、開業後の経営改善まで12ヶ月伴走します。
料金はプランと任せる範囲で異なるため、ご相談時にご案内しています。詳しくは プラン比較 をご覧ください。
Q&Aよくある質問
Q1飲食店の開業に資格は必要ですか?
調理師免許は不要です。必要なのは施設ごとに1名の「食品衛生責任者」で、各都道府県の食品衛生協会が行う1日の講習会で取得できます。収容人員が30人以上になる店舗では「防火管理者」の選任も必要です。
Q2営業許可はどのタイミングで申請しますか?
東京都の案内では、施設工事の完成予定日の10日くらい前に保健所へ申請します。図面が固まる前に事前相談に行っておくと、施設基準に合わないための工事やり直しを避けられます。
Q3自己資金はいくらあれば開業できますか?
日本政策金融公庫の2025年度調査では、開業時の自己資金は平均279万円、開業費用の中央値は600万円でした。公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は制度上の自己資金要件が撤廃されていますが、審査では自己資金の積み立て経緯が見られます。詳しくは融資のガイドをご覧ください。
Q4物件が決まってから相談しても間に合いますか?
間に合います。候補の段階なら、その物件で続けられるかを立地診断と売上シミュレーションで確認し、合わなければ見送る判断も含めてお伝えします。契約済みなら、その物件を前提に計画・HP・採用を進めます。
Ref.参考資料・出典
- 東京都保健医療局「食品衛生の窓」営業許可・届出の概要 https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/kyokatodokede/youshiki.html
- freee「飲食店営業許可証を取得するには?」(2026年4月21日更新。二次情報) https://www.freee.co.jp/kb/kb-license/restaurant-application/
- 日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月公表。対象は公庫国民生活事業が2024年4〜9月に融資した企業、回答2,165社。公庫の融資先に限られる点に注意) https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kaigyo_251205_1.pdf
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」(制度の最新条件は公庫の公式ページで確認) https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_shinkikaigyou_m.html
- 行政書士高橋光事務所「防火対象物使用開始届」(二次情報。提出期限は各自治体の火災予防条例で定められる) https://hikaru-office.com/bouka-taisho-shiyokaishi/
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法的・税務的な助言ではありません。制度や手数料は改正・改定されることがあるため、申請前に所管の窓口でご確認ください。
