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Clinic / Cost質問別

クリニック開業の資金はいくら必要か:診療科で3倍違う理由と、借入の組み立て方

クリニックの開業資金は、飲食店や美容室とは桁が違います。しかも診療科によって必要額が3倍近く変わる。この記事では、業界で示されている金額の目安を「どこまで信じてよいか」から説明し、医療機器と運転資金という2つの大きな変数をどう決めるか、融資をどう組み合わせるかを順番に書きます。

更新日 2026.10.08執筆・監修 株式会社ハイトンインダストリー YUMEMIRU 店舗開業サポート読了目安 約8分

Summaryこの記事の要点

  • クリニック開業資金に公的な統計はない。医療機器メーカー系の記事では「5,000万〜1億円以上」が目安とされ、内科8,000万〜1億2,000万円、精神科・心療内科5,000万〜7,000万円、整形外科1億〜1億5,000万円と診療科で大きく違う(調査値ではなく目安)。

  • 金額を動かす変数は2つ。医療機器(買うかリースか、新品か中古か)と、運転資金(保険診療の入金は診療月の翌々月)。

  • 融資は公庫の新規開業・スタートアップ支援資金(限度7,200万円)と、福祉医療機構の医療貸付(診療所の新築・機械購入・長期運転資金)を軸に、民間の医療ローンを組み合わせる。

  • 自己資金は総額の1〜2割が目安とされる。借入が大きいぶん、開業後の返済額を月商の見立てと並べて確認することが、計画の要になる。

01「5,000万〜1億円」をどう読むか:統計ではなく、業界の目安

クリニックの開業資金について、日本政策金融公庫の新規開業実態調査のような公的統計はありません。公庫の2025年度調査は全業種で開業費用の平均975万円・中央値600万円ですが、診療所は医療機器と内装の規模が全く違うので、この数字は参考になりません。

業界で広く引用されているのは、医療機器メーカー系の情報サイト(PHC Medicom Park、2026年4月更新)が示す「一般的に5,000万〜1億円以上」という目安です。同じ記事の診療科別の目安は、内科 8,000万〜1億2,000万円、小児科 7,000万〜1億円程度、精神科・心療内科 5,000万〜7,000万円、皮膚科(保険診療のみ)6,000万〜8,000万円、耳鼻咽喉科 9,000万〜1億2,000万円、眼科は手術なしで6,000万円・手術ありで1億〜1億5,000万円、整形外科 1億〜1億5,000万円。これらは調査値ではなく、開業支援の現場で使われている目安です。出典も示されていません。

それでもこの幅が示していることは一つで、クリニックの開業資金は「診療科=医療機器の構成」でほぼ決まる、ということです。レントゲンやエコー、内視鏡、リハビリ機器が要るかどうかで、数千万円単位で変わります。最初に決めるべきなのは物件でも内装でもなく、「どの検査・処置を自院でやるか」です。

02内訳の考え方:テナント開業の5費目

同じ記事が示すテナント開業の内訳例は、テナント契約費用 約360万円、内装工事費 約3,600万円、医療機器・什器備品 約2,650万円、開業準備費用 約750万円、運転資金 約3,000万円です(二次情報。内科の例では内装2,400〜3,600万円、医療機器2,000〜3,000万円、運転資金約3,000万円)。飲食店の内訳と比べると、内装の単価が高いこと(医療用の電源・給排水・放射線防護・バリアフリー)と、運転資金の額が桁違いに大きいことが特徴です。

費目中身判断のポイント
① 物件取得費保証金、礼金、仲介手数料、前家賃医療モール・医療ビルは保証金が高めの傾向。契約前に「診療所として使用できるか」「用途変更が要るか」を確認(200㎡以下は用途変更手続きが不要)
② 内装工事診察室・処置室・待合・トイレ、医療用の電気・給排水、X線室の防護、空調坪単価は診療科で変わる(精神科・心療内科 60〜70万円、耳鼻咽喉科 70〜80万円程度という目安が示されている。二次情報)。医療施設の施工実績がある会社に限る
③ 医療機器・什器診療科の必須機器、電子カルテ・レセコン、待合の什器、院内掲示買うか、リースか、中古か。次の節で詳しく
④ 開業準備費開設届・保険医療機関指定の手続き、HP・看板、採用、研修期間の人件費、広告HPは医療広告ガイドラインの対象。開業時のHP制作ガイドとクリニック開業支援ガイドを参照
⑤ 運転資金人件費、家賃、医薬品・材料、リース料、借入返済保険診療の入金は診療月の翌々月。開業直後は売上の7割が2か月遅れて入る前提で計算する

※ 金額はいずれも業界の目安であって、個別の見積もりに置き換えてください。当社は、候補物件と診療科の構成から5費目を一緒に積み上げます。

03医療機器:買うか、リースか、中古か

開業資金を一番動かせるのが医療機器です。高額な機器をリースにすると初期費用を大きく圧縮できる、というのは業界の共通した見方で、Medicom Park の記事は、据え置き型エコーで新品1,000万円超のものが中古では100万円程度で手に入る例があるとしています。一方で中古機器には薬機法上の制限が伴う場合があり、メーカー保証が引き継げるかの確認が要るとも書かれています。

判断の軸は3つです。1つ目、その機器が開業初日から稼働率高く使われるか。使う頻度が読めないものは、まずリースか中古で入れて、稼働が見えてから買い替える。2つ目、保守契約の有無と費用。医療機器は本体価格より保守料が経営を圧迫することがあります。3つ目、リース料は運転資金側の固定費になるということ。初期費用を下げた分だけ毎月の支出が増えるので、⑤の運転資金の計算に必ず入れてください。

福祉医療機構(WAM)の医療貸付には「機械購入資金」の区分があり、令和8年9月1日改定の利率表では5年以内で年3.000%、重点医師偏在対策支援区域での診療所の承継・開業に該当すると0.5%の優遇があります。買う場合は、リース料率とこの金利を並べて比べると判断しやすくなります。

04融資の組み立て:公庫、福祉医療機構、民間

クリニックの開業資金は自己資金だけでは組めないのが普通で、業界では自己資金は総額の1〜2割が目安とされます(Medicom Park。本文では10%以上、まとめでは10〜20%と表記が揺れています)。1億円の計画なら1,000万〜2,000万円を自己資金で用意し、残りを借入で組む、という形です。

借入先主な制度ポイント
日本政策金融公庫新規開業・スタートアップ支援資金(融資限度7,200万円、うち運転資金4,800万円。設備20年・運転10年以内、据置5年以内。無担保・無保証人の枠あり)自己資金要件は撤廃されているが、審査では積み立ての経緯と事業計画の数字が見られる。詳しくは開業資金の融資相談ガイド
福祉医療機構(WAM)医療貸付。診療所の新築資金・増改築資金、機械購入資金、長期運転資金令和8年9月1日改定の利率表では、新築資金の固定金利は10年以内2.700%〜20年以内3.400%、長期運転資金は3年以内3.000%(保証人不要制度は+0.150%)。融資率・対象条件は WAM の窓口で確認
民間銀行・信用金庫の医療ローン、医師信用組合、医療機器メーカー系のリース・ローン公庫・WAMで足りない分を埋める。複数行から同時に条件を取ると比較しやすい

借入が大きいクリニックで一番大事なのは、融資が通るかよりも、開業後の月々の返済額が月商の見立てに対して無理がないかです。たとえば8,000万円を15年で借りれば、元金だけで月44万円強の返済になります(利息を除いた単純計算)。これに家賃・人件費・リース料を足した固定費が、保険診療の入金が始まる前の2か月間も出ていきます。

05運転資金:診療報酬は「翌々月」に入る

クリニック特有の事情が、保険診療の入金サイクルです。診療月のレセプト(診療報酬明細書)を翌月10日までに審査支払機関(支払基金・国保連合会)に請求し、支払われるのは翌々月。窓口で受け取れるのは患者負担分(多くは3割)だけで、残りの7割は2か月遅れて入ってきます(富士フイルムのクリニック経営コラムの説明。入金日は審査支払機関ごとに異なるので要確認)。

つまり開業月と翌月は、人件費・家賃・リース料・返済が満額出ていくのに、売上の7割はまだ入ってこない。業界の内訳例で運転資金が約3,000万円と大きいのはこのためです。目安としては、月の固定費に2か月分の「入金待ち」を上乗せし、さらに患者数が計画の7割で推移した場合でも半年もつ額を見てください。公庫の新規開業・スタートアップ支援資金に運転資金4,800万円の枠があるのは、こうした業種を想定しているからでもあります。

開設届、保険医療機関の指定(毎月1日付)、医療広告ガイドラインといった手続きの流れはクリニック開業支援ガイドに、物件の見極めは立地診断ガイドにまとめました。当社の店舗開業サポートでは、診療科の構成と候補物件から5費目を積み上げ、返済額と入金サイクルを織り込んだ資金繰り表を一緒に作ります。

Plan 01

梅1回のみ

事業計画・コンセプト・売上シミュレーションの相談を1回。まず全体を整理したい方に。

Plan 02

竹6ヶ月

計画づくりから物件の立地診断、融資申込みの準備まで。開業前の判断を一緒に進めます。

Plan 03

松12ヶ月

開業準備に加えて、HP制作・運用、採用準備、開業後の経営改善まで12ヶ月伴走します。

料金はプランと任せる範囲で異なるため、ご相談時にご案内しています。詳しくは プラン比較 をご覧ください。

Q&Aよくある質問

Q1クリニックの開業資金は平均いくらですか?

公的な統計はありません。医療機器メーカー系の記事(PHC Medicom Park、2026年4月更新)では「5,000万〜1億円以上」が目安とされ、精神科・心療内科5,000万〜7,000万円、内科8,000万〜1億2,000万円、整形外科1億〜1億5,000万円と診療科で大きく異なります。いずれも調査値ではなく目安です。

Q2自己資金はいくら必要ですか?

業界では総額の1〜2割が目安とされています。公庫の新規開業・スタートアップ支援資金に自己資金の要件はありませんが、審査では自己資金の積み立て経緯と事業計画の数字が見られます。

Q3医療機器はリースと購入のどちらがよいですか?

開業初日から稼働率が読める機器は購入、読めない機器はリースか中古で入れて稼働を見てから買い替える、というのが判断の軸です。リース料は毎月の固定費になるので、運転資金の計算に必ず含めてください。中古は薬機法上の制限とメーカー保証の引き継ぎを確認します。

Q4運転資金はなぜそんなに必要なのですか?

保険診療の入金が診療月の翌々月だからです。開業月と翌月は固定費が満額出ていくのに売上の7割が入ってきません。月の固定費2か月分の入金待ちに加え、患者数が計画の7割でも半年もつ額を見るのが現実的です。

Q5福祉医療機構の融資は個人のクリニックでも使えますか?

福祉医療機構の医療貸付には診療所向けの新築資金・増改築資金・機械購入資金・長期運転資金の区分があります。融資率や対象条件は案件ごとに異なるため、WAM の窓口で確認してください。利率は改定されるので最新の利率表を見ることを勧めます。

Ref.参考資料・出典

  1. PHC株式会社 Medicom Park「クリニック開業の初期費用はいくら?」(2026年4月23日更新。医療機器メーカー系の二次情報。金額は調査値ではなく目安) https://www.phchd.com/jp/medicom/park/idea/opening-initial_cost
  2. 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」(制度の最新条件は公庫の公式ページで確認) https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_shinkikaigyou_m.html
  3. 独立行政法人福祉医療機構「医療貸付 主要貸付利率表」(令和8年9月1日改定)(利率は改定されるため最新の表で確認) https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/20260901iryou.pdf
  4. 富士フイルム クリニック経営コラム「診療報酬債権ファクタリングのメリット・デメリット」(企業コラム(二次情報)。入金サイクルの一般的な説明として参照) https://www.fujifilm.com/jp/ja/healthcare/clinic/column/clinic_management-factoring
  5. 日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月公表。対象は公庫国民生活事業が2024年4〜9月に融資した企業、回答2,165社。公庫の融資先に限られる点に注意) https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kaigyo_251205_1.pdf
  6. 東京都都市整備局「建築基準法改正により200㎡以下の用途変更の手続が不要に」 https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/toshiseibi/pdf_topics_r03_pdf_018_02

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法的・税務的な助言ではありません。制度や手数料は改正・改定されることがあるため、申請前に所管の窓口でご確認ください。

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