Summaryこの記事の要点
美容室は美容師法の「美容所」。保健所に開設届を出し、施設完成後の検査で構造設備が基準に合うことの確認を受けてから営業する。
届出は開設予定日の約2週間前が目安(渋谷区)。検査手数料は24,000円(渋谷区・目黒区の例)。事前相談は工事着工前に図面を持って。
構造設備基準の要点:作業室は1室13㎡以上、美容いすは13㎡で6台まで(7台目から1台につき3㎡追加)、作業面の照度100ルクス以上、床は不浸透性、待合は作業室と区画。
美容師が常時2人以上なら管理美容師(免許取得後3年以上の実務+指定講習)。従業者全員分の医師の診断書(3か月以内)が要る。
01開設までの流れ:事前相談、届出、検査、確認書
美容所の開設手続きの流れは、どの保健所でもおおむね同じです。渋谷区保健所の「理容所・美容所のてびき」(令和5年12月改訂)では、施設の平面図を持参して開設前に事前相談、開設届は開設予定日の約2週間前を目安に提出、施設完成後に保健所職員が基準適合を検査、適合して保健所長の確認を受けると開設できる、とされています。未完成や設備未整備のまま検査日を迎えると再検査になり、予定日に開設できないことがあります。
| 段階 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 工事着工前 | 平面図を持って保健所に事前相談 | この段階で基準に合わない点を直せば、工事のやり直しが要らない。施工会社に美容所の施工経験があるか確認する |
| 開設予定日の約2週間前 | 開設届と添付書類を提出、検査手数料を納める | 従業者全員分の免許証(原本提示)と診断書が揃っていないと受理されない |
| 施設完成後 | 保健所職員による施設検査 | 椅子・洗髪台・消毒設備が設置済みで、水が出る状態にしておく |
| 検査後 | 保健所長の確認、確認書の受領 | 目黒区の資料では検査後に中1日(土日祝除く)の審査期間。確認書は再発行されない |
| 開設 | 営業開始。税務署への開業届は開業から1か月以内 | 保健所の確認が下りるまで、お客さまに施術はできない |
検査手数料は渋谷区・目黒区とも24,000円(現金)です。手数料は自治体の条例で決まるため、都保健所管内(特別区・八王子市・町田市以外)や他県では金額が異なることがあります。開設予定地の保健所で確認してください。
02開設届に添える書類
渋谷区のてびきに挙げられている書類は次のとおりです。区によって様式名は少し違いますが、中身はほぼ共通です。
- 開設届、構造設備の概要、施設の平面図(寸法が分かるもの)、施設付近の見取図
- 従業者名簿
- 美容師免許証(全従業者分、原本を提示。コピー不可)
- 医師の診断書(全従業者分。結核と伝染性皮膚疾患の有無が記載された、発行から3か月以内のもの)
- 管理美容師講習会修了証(美容師である従業者が常時2名以上の場合)
- 登記事項証明書(開設者が法人の場合、発行から6か月以内)
- 住民票の写し(開設者が外国人の場合、マイナンバーの記載がないもの)
- 誓約書(洗髪設備を省略する場合。事前に保健所と相談)
つまずきやすいのは診断書です。発行から3か月以内という期限があるので、開業の半年前に受けた健康診断は使えません。従業者を開業直前に採用する場合、その人の分の診断書と免許証原本が間に合うかで届出日が決まります。採用の時期は 開業時の採用ガイド と合わせて逆算してください。
03構造設備基準:図面で確認する数字
東京都保健医療局の「美容所の開設に関する基準等について」と渋谷区のてびきから、数字で確認できる項目をまとめます。基準の根拠は美容師法と施行規則、東京都(特別区は各区)の条例・規則で、保健所の検査で実地に確認されます。
| 項目 | 基準 | 図面での見方 |
|---|---|---|
| 作業室の床面積 | 美容作業を行う1室につき13㎡以上(内法)。待合場所・消毒室などは含めない | セット面と洗髪台を置く部屋だけで13㎡を確保する。壁の内側で測る |
| 美容いすの台数 | 床面積13㎡で6台まで。7台目からは1台増すごとに3㎡を加える(7台で16㎡、8台で19㎡、10台で25㎡) | 将来セット面を増やす予定があるなら、最初から面積に余裕を見る |
| 待合場所 | 作業室と明確に区画する。入口付近で、作業室を通らずに入れる位置。固定したついたて、動かせない家具、壁や扉で区画する(渋谷区) | 「ソファを置けば待合」にはならない。動かせる家具は区画と認められない |
| 床・腰板 | コンクリート、タイル、リノリウム、板など水を通さない材料。畳・カーペット・ふすま・障子は不可(渋谷区) | デザインでカーペットを敷きたい場合は、作業室の外(待合)に限る |
| 採光・照明 | 作業面の照度100ルクス以上(渋谷区は300ルクス以上が望ましいとする) | 間接照明中心のデザインでも、作業面で測って足りるか |
| 換気 | 美容所内の炭酸ガス濃度0.5%(5,000ppm)以下。渋谷区は1,000ppm以下が望ましいとする | 窓のない区画は機械換気の計画が要る |
| 洗髪設備 | 流水式のものを設ける(省略する場合は事前相談と誓約書) | カット専門店で省略する場合も、相談なしに外さない |
| 消毒設備・洗い場 | 器具の消毒設備を設ける。消毒用の流水設備は、トイレの手洗いや洗髪設備とは別に設ける(渋谷区) | 給排水の位置を図面段階で決めておく。後付けは配管工事になる |
| 格納・汚物箱 | 消毒済みと未消毒の器具を分けて入れる容器、ふた付きの汚物箱と毛髪箱 | 備品だが、検査日に揃っていないと指摘される |
東京都の基準では、器具の消毒方法も細かく定められています。血液が付着した(またはその疑いがある)器具は、洗浄のうえ、沸騰後2分以上の煮沸、エタノール水溶液(76.9〜81.4%)に10分以上、次亜塩素酸ナトリウム0.1%以上の水溶液に10分以上、のいずれか。血液の付着がない器具は、これらに加えて紫外線消毒器(1㎠あたり85μW以上を20分以上)などが使えます。検査では消毒薬と消毒器の有無も見られます。
Check
図面で一番多い手戻りは「待合の区画」と「作業室の面積に待合や受付を含めてしまう」ことです。デザイン会社の図面は見た目を優先するので、保健所の基準を知らずに描かれていることがあります。事前相談に行くのは施工会社ではなく開設者本人です。図面を自分で説明できる状態にしてから行ってください。
04管理美容師と従業者:人に関する要件
美容師でなければ美容を業として行えませんが、開設者は美容師でなくても構いません(東京都保健医療局)。美容師である従業者が常時2人以上いる美容所には、管理美容師を置く必要があります。要件は、美容師免許取得後3年以上美容の業務に従事していること、都道府県知事が指定する講習会を修了していることの2つです(渋谷区のてびき)。開設者自身が主として管理するなら、開設者が管理美容師になれます。
1人で開業するなら管理美容師は不要です。ただし、2人目を雇った時点で必要になるので、採用の計画があるなら開業前に講習を済ませておくと、採用の時期を講習日程に縛られません。採用そのものの進め方、2024年からの労働条件明示のルール、東京都の最低賃金(2026年10月から時間額1,280円)は 開業時の採用ガイド にまとめました。
保健所の手続きは美容師ご本人が行うものですが、その前にある「どの物件なら基準を満たして、かつ家賃に見合う売上が立つか」「開業月に予約が入る状態をどう作るか」は、物件と計画の話です。美容室の開業支援ガイド と 立地診断ガイド を合わせて読んでください。当社の店舗開業サポートでは、図面の段階から基準と売上の両方を見ます。
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Q&Aよくある質問
Q1美容室の開業に許可は必要ですか?
「許可」ではなく「届出+検査」です。美容師法に基づき、保健所に美容所の開設届を出し、施設完成後の検査で構造設備が基準に適合していることの確認を受けてから営業できます。確認前に施術を行うことはできません。
Q2開設届はいつまでに出せばよいですか?
渋谷区の案内では開設予定日の約2週間前が目安、目黒区の資料では開設日の10日前までとされています。区によって違うので、開設予定地の保健所に確認してください。事前相談は工事着工前に、平面図を持って行くのが望ましいとされています。
Q3美容室の最低面積はどのくらいですか?
東京都の基準では、美容作業を行う作業室は1室につき13㎡以上(内法)で、待合や消毒室は含みません。美容いすは13㎡で6台まで、7台目からは1台につき3㎡を加えた面積が必要です。
Q4保健所の検査手数料はいくらですか?
渋谷区・目黒区の資料ではいずれも24,000円(現金)です。手数料は自治体の条例で決まるため、都保健所管内や他県では異なる場合があります。開設予定地の保健所で確認してください。
Q51人で開業する場合、管理美容師は必要ですか?
不要です。管理美容師が必要になるのは、美容師である従業者が常時2人以上いる場合です。2人目を雇う予定があるなら、免許取得後3年以上の実務経験を満たしていれば、開業前に指定講習を受けておくと採用の時期を縛られません。
Ref.参考資料・出典
- 東京都保健医療局「美容所の開設に関する基準等について」(都保健所管内(特別区・八王子市・町田市を除く)の基準。特別区は各区保健所の案内を参照) https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/eisei/biyousho/biyou_kijyun
- 渋谷区保健所「理容所・美容所のてびき」(令和5年12月13日改訂。特別区の一例) https://files.city.shibuya.tokyo.jp/assets/12995aba8b194961be709ba879857f70/81bb9ba2cfbe4106bf8f548dcb459709/riyo_biyo_tebiki.pdf
- 目黒区「理容所・美容所 開設ガイドブック」(平成24年3月改訂と古いため、手数料・期限は渋谷区の最新資料と照合) https://www.city.meguro.tokyo.jp/documents/3150/guidebook_1.pdf
- 東京都西多摩保健所「美容所」 https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/hokenjyo/nisitama/soudan/biyou
- 東京労働局「東京都の最低賃金は令和8年10月1日から、1,280円になります」 https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/list/kiba/minimum-wage-information_2026.html
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法的・税務的な助言ではありません。制度や手数料は改正・改定されることがあるため、申請前に所管の窓口でご確認ください。
