Summaryこの記事の要点
事業計画書の目的は融資の前に「物件契約の可否判断」。家賃が決まる前に売上と利益の見立てをつくる。
売上の式は業態で違う。飲食は 席数×回転数×客単価×営業日数、美容は セット面×回転×単価、ジムは 会員数×月会費。
損益分岐点売上 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)。開業後は「計画の7割の売上で何か月もつか」を先に計算する。
公庫の2025年度調査では、開業時の苦労の1位は資金繰り(56.9%)、2位は顧客・販路の開拓(49.9%)。計画の弱点はだいたいこの2つに出る。
01事業計画書は何のために書くのか
創業融資の申込みには計画書が必須です(公庫の「創業計画書」)。ただ、融資審査に通ることを目的に書き始めると、数字が「通りそうな数字」に寄ります。計画書の本来の役目は、物件を契約する前に、その家賃と広さと席数で、どのくらいの売上が必要で、それが現実的かを自分で確かめることです。
日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」では、開業時に苦労したことの1位が「資金繰り、資金調達」(56.9%)、2位が「顧客・販路の開拓」(49.9%)、3位が「財務・税務・法務に関する知識の不足」(36.4%)でした。開業後の業況は黒字基調が67.0%、赤字基調が33.0%。3軒に1軒は赤字で推移していることになります(公庫の融資先が対象の調査です)。計画書で潰しておくべき弱点は、この上位2つにほぼ集約されます。
02売上シミュレーションの式:業態別
売上の見立ては、業態ごとに決まった式があります。式の各項目に、同業態で実際にあり得る控えめな数字を入れるのがコツです。
| 業態 | 月商の式 | 楽観しやすい項目 |
|---|---|---|
| 飲食店 | 席数 × 回転数 × 客単価 × 営業日数(ランチ・ディナーを分けて計算) | 回転数。満席前提で置きがち。平日ランチ1.5回転・ディナー1回転のような実測に近い値から |
| 美容室 | セット面数 × 1日の施術人数 × 客単価 × 営業日数(スタイリスト1人の上限人数が天井) | 新規客の数。開業初月から常連がいる前提になりがち |
| パーソナルジム | セッション数 × 単価(+月会費 × 会員数)。トレーナー1人の1日の枠数が上限 | 稼働率。1日8枠のうち何枠が埋まるか |
| クリニック | 1日の患者数 × 診療単価(保険点数ベース)× 診療日数 | 開業初期の患者数の立ち上がり。半年〜1年の助走期間を見込む |
| 物販・小売 | 来店客数 × 購買率 × 客単価 × 営業日数 | 購買率。通行量がそのまま来店にならない |
計算したら、同じ式で「悲観シナリオ(計画の70%)」もつくります。開業直後の売上は計画を下回ることの方が多く、その状態で何か月もつかが、運転資金の必要額です。
03損益分岐点と、家賃比率
損益分岐点売上高は、固定費 ÷(1 − 変動費率)で出ます。固定費は家賃・人件費(固定給分)・リース・保険・通信など売上に関係なくかかる費用、変動費は原材料費(飲食なら食材、美容なら薬剤)や歩合給、決済手数料など売上に比例する費用です。たとえば固定費が月120万円、変動費率が35%なら、120 ÷ 0.65 = 約185万円が、利益ゼロになる月商です。
家賃は、業界で「月商の10%以内」が目安と言われます(統計ではなく経験則です)。月商の見立てが185万円なら、家賃の上限は18万円前後。この順番で考えると、物件を先に見ても冷静でいられます。逆に、物件を先に決めて家賃25万円になってしまうと、必要な月商は250万円に跳ね上がり、回転数や単価を上げる前提に計画を「合わせる」ことになります。開業後に苦しくなる計画は、だいたいこの逆順でつくられています。
Check
計画書の数字を見るときは、自分で3つ確認してください。(1) 回転数・稼働率は同業態の実測に近いか、(2) 売上が計画の7割で推移した場合に運転資金は何か月もつか、(3) 家賃は見立てた月商の10%以内か。この3つが通らない計画は、融資が通っても続きません。
04公庫の創業計画書に書く項目
日本政策金融公庫の「創業計画書」は、創業の動機、経営者の略歴(勤務経験・業界経験)、取扱商品・サービスとセールスポイント、取引先・取引関係、従業員、借入の状況、必要な資金と調達方法、事業の見通し(創業当初と軌道に乗った後の月平均の売上・原価・経費)で構成されています。審査で重く見られるのは、業界での経験と、必要資金の内訳(見積もり)と、売上見通しの根拠のつながりです。詳しくは 開業資金の融資ガイド にまとめました。
「事業の見通し」欄は、上で計算した売上シミュレーションと損益分岐点をそのまま使えます。根拠(席数・回転数・単価の設定理由)を別紙で添えると、面談で説明しやすくなります。
05計画の相談で、YUMEMIRUができること
当社の梅プランは、事業計画・コンセプト・売上シミュレーションの相談を1回で行うプランです。自分でつくった計画の数字を、店舗を出して運営してきた支援者が、同業態の実感と照らして確認します。竹・松プランでは、その計画を融資申込みの準備や物件の立地診断につなげて進めます。
Plan 01
梅1回のみ
事業計画・コンセプト・売上シミュレーションの相談を1回。まず全体を整理したい方に。
Plan 02
竹6ヶ月
計画づくりから物件の立地診断、融資申込みの準備まで。開業前の判断を一緒に進めます。
Plan 03
松12ヶ月
開業準備に加えて、HP制作・運用、採用準備、開業後の経営改善まで12ヶ月伴走します。
料金はプランと任せる範囲で異なるため、ご相談時にご案内しています。詳しくは プラン比較 をご覧ください。
Q&Aよくある質問
Q1事業計画書は自分で書くべきですか?
数字は自分で出すことを勧めます。面談で説明するのはご本人ですし、物件や採用の判断で何度も見直す道具だからです。式の立て方や前提の置き方を一緒に確認する相談は有効です。
Q2売上予測はどのくらい控えめにすればよいですか?
式の各項目に同業態の実測に近い数字を入れたうえで、計画の70%で推移する悲観シナリオもつくり、その状態で運転資金が何か月もつかを確認してください。開業直後は計画を下回ることの方が多いためです。
Q3家賃はどのくらいまでなら大丈夫ですか?
業界では月商の10%以内が目安とされます(経験則)。先に売上の見立てを出し、その10%を家賃の上限として物件を探す順番にすると、無理のない計画になります。
Q4計画の相談だけでも受けてもらえますか?
受けています。梅プランは事業計画・コンセプト・売上シミュレーションの相談1回のプランです。相談自体は無料で、プランの内容と料金はご相談時にご案内します。
Ref.参考資料・出典
- 日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月公表。対象は公庫国民生活事業が2024年4〜9月に融資した企業、回答2,165社。公庫の融資先に限られる点に注意) https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kaigyo_251205_1.pdf
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」(制度の最新条件は公庫の公式ページで確認) https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_shinkikaigyou_m.html
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法的・税務的な助言ではありません。制度や手数料は改正・改定されることがあるため、申請前に所管の窓口でご確認ください。
